
「水草の絨毯に憧れてリシアをレイアウトしたのに、すぐにプカプカと浮いてきてしまう…」 「何度も直しているのに、気づけば水面を漂っていて見栄えが悪い…」
アクアリウムでリシアを育てていると、このような悩みに直面することがあります。美しい緑の絨毯は、水槽の魅力を格段に引き上げてくれますが、その維持には少しコツが必要です。
実は、リシアが浮いてしまうのには、ちゃんとした理由があります。そして、その原因さえ理解すれば、対策は決して難しくありません。
この記事では、なぜリシアが浮いてしまうのか、その主な原因から、今日からすぐに実践できる具体的な7つの対策、さらには浮いてしまったリシアの有効活用法まで、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたはリシアが浮く悩みから解放され、理想の美しいアクアリウムレイアウトを維持するための知識と自信を手にしているはずです。
そもそもリシアとは?

対策の話に入る前に、まずはリシアという水草が持つ基本的な性質について理解しておくことが非常に重要です。
実は、リシアは本来、根を持たずに水面を漂って成長する「浮き草」の一種です。水田や池などで、水面に緑のマットを形成しているのを見かけることがあります。
ではなぜ、アクアリウムでは石や流木に固定して「前景草」として沈めて使われることが多いのでしょうか。それは、リシアが強い光と豊富な二酸化炭素(CO2)を与えられる環境下で、葉の表面に酸素の気泡をたくさんつけるという、他の水草にはない非常に美しい特徴を持っているからです。
キラキラと輝く気泡をつけたリシアの絨毯は、アクアリストにとって一度は挑戦してみたい憧れのレイアウトなのです。
しかし、この「本来は浮き草である」という性質と、「光合成で気泡(酸素)を出す」という特徴こそが、リシアが浮きやすい根本的な原因につながっています。この点をまず頭に入れておきましょう。
リシアが浮いてしまう主な3つの原因

リシアの基本性質を理解したところで、次にアクアリウムの水槽内で浮いてしまう具体的な原因を3つに絞って見ていきましょう。ご自身の水槽がどのケースに当てはまるか、チェックしてみてください。
原因1: 成長による浮力(光合成が活発)
最も一般的で、ある意味では「順調な証拠」とも言える原因です。
リシアは適切な環境(十分な光、CO2)が整うと、非常に活発に光合成を行います。その結果、葉の表面にたくさんの酸素の気泡をつけます。この気泡一つひとつが小さな浮き輪のような役割を果たし、リシア全体を水面に押し上げる強い浮力となるのです。
特に、成長がピークに達したリシアの塊は、固定している力を上回るほどの浮力を持ち、ある日突然、大きな塊となってプカッと浮き上がってしまうことがあります。
原因2: 固定が甘い・不十分
リシアを石や流木、リシアネットに固定する際の物理的な問題です。
- テグスや糸の巻き付けが緩い
- 成長の過程でテグスが食い込み、切れてしまった
- リシアネットの隙間からリシアが抜けてしまった
- そもそも重りが軽すぎて、リシアの浮力に負けている
特に、レイアウトしたばかりの頃は、リシアがまだ土台にしっかりと絡みついていないため、わずかなきっかけで剥がれて浮きやすくなります。また、エビなどの生体が糸をついばんで切ってしまうケースも考えられます。
原因3: トリミング不足による過密
リシアは成長スピードが非常に速い水草です。定期的なメンテナンスを怠ると、あっという間に厚く、過密な状態になります。
リシアが過密になると、下層部分に光が届かなくなり、光合成ができずに枯れてしまいます。枯れた部分は茶色く変色し、石やネットへの固着力を失います。
その結果、上部は青々として元気なままなのに、土台となっている下層部が剥がれてしまい、上部全体がごっそりと浮き上がってしまうのです。これは、長期的にリシアを維持している場合に最も起こりやすい原因と言えるでしょう。
リシアを浮かせないための7つの対策

原因がわかれば、あとは対策を講じるだけです。ここでは、リシアを浮かせずに美しい状態をキープするための、効果的な7つの対策をご紹介します。
対策1: リシアネットを使う
最も手軽で確実な方法の一つが、市販されている「リシアネット」を使用することです。これは、ステンレス製やセラミック製のメッシュ状のプレートで、リシアを挟み込んで沈めるための専用アイテムです。
使い方は簡単で、2枚のネットの間にリシアを薄く敷き詰め、水槽の底に置くだけです。ネット自体に重さがあるため、リシアの浮力に負けることなく、簡単に美しい絨毯を作ることができます。
対策2: 石や流木に直接巻き付ける

より自然なレイアウトを目指したい方には、石や流木に直接リシアを巻き付ける方法がおすすめです。
テグス(釣り糸)や、いずれ水中で溶けてなくなる木綿糸などを使って、リシアを薄く広げながら、石や流木にぐるぐると巻き付けて固定します。最初は見た目が少し不格好かもしれませんが、リシアが成長すれば糸は隠れて見えなくなります。
ポイントは、あまり強く巻きすぎず、かつ、緩すぎない絶妙な力加減で行うことです。成長したリシアが自ら絡みつき、安定するまでの土台作りと考えましょう。
対策3: こまめなトリミング
リシアを長期的に美しく維持するための最重要ポイントと言っても過言ではありません。リシアの厚みが1〜2cm程度になったら、ハサミで大胆にカットしてしまいましょう。
トリミングをすることで、過密状態を防ぎ、下層部にも光が当たるようになります。これにより、下層部が枯れて剥がれてしまうのを防ぐことができます。カットしたリシアの破片は網ですくい取りましょう。最初は見た目が悪くなりますが、すぐに新芽が伸びてきて、より密度の高い美しい絨毯に再生します。
対策4: CO2の添加量を調整する
CO2の添加はリシアの成長と美しい気泡のために不可欠ですが、過剰な添加は光合成を促進しすぎ、浮力を増大させる原因にもなります。もし頻繁にリシアが浮くようなら、CO2の添加量を少し減らして、成長スピードを穏やかにコントロールしてみるのも一つの手です。
対策5: 照明の強さ・時間を調整する
CO2と同様に、照明も光合成の速度に直結します。照明が強すぎたり、点灯時間が長すぎたりすると、成長が早まり浮きやすくなります。現在、1日に10時間以上点灯しているようであれば、8時間程度に短縮するなど、環境に合わせて調整してみましょう。
対策6: 水流を弱める
フィルターの排水などによる強い水流が直接リシアに当たっていると、固定している糸が緩んだり、リシアそのものが剥がれたりする原因になります。
排水口の向きを変えたり、水流を弱めるパーツを取り付けたりして、リシアに当たる水流をできるだけ穏やかにしてあげましょう。
対策7: そもそも浮かせて楽しむ
これは発想の転換です。リシアは本来「浮き草」なのですから、無理に沈めずに浮かせて楽しむという選択肢もあります。
水面に浮かべたリシアは、メダカやグッピーなどの産卵床として非常に優秀です。また、生まれたばかりの稚魚や稚エビの絶好の隠れ家にもなります。ビオトープなどで活用するのも良いでしょう。
浮いてしまったリシアはどうする?
すでにお手元の水槽でリシアが浮いてしまった場合も、諦める必要はありません。浮いたリシアは十分に再利用できます。
- 回収して再固定する: 網ですくい取り、再度リシアネットに挟んだり、新しい石に巻き付けたりしてレイアウトに戻します。
- トリミングして利用する: 浮いたリシアの塊から元気な部分だけをトリミングし、それを元に新しいレイアウトを作ります。
- 別の水槽で活用する: 上記の「対策7」で紹介したように、メダカ水槽やエビ水槽に浮かべて、産卵床や隠れ家として活用します。
ゴミとして捨ててしまう前に、ぜひこれらの有効活用法を試してみてください。
まとめ
今回は、アクアリウムでリシアが浮いてしまう原因と、その具体的な対策について詳しく解説しました。
【この記事のポイント】
- リシアは本来、水面に浮かんで成長する「浮き草」である。
- 浮く主な原因は、①成長による浮力、②固定の甘さ、③トリミング不足による過密の3つ。
- 対策の基本は、リシアネットやテグスでしっかり固定すること。
- 美しい状態を長く維持するには「こまめなトリミング」が最も重要。
- 浮いてしまっても再利用は可能。浮かせて楽しむ方法もある。
一見、管理が難しそうに思えるリシアですが、その「浮きやすい」という性質をきちんと理解し、少しだけ手をかけてあげることで、誰でも美しい気泡の絨毯を維持することができます。
この記事を参考に、ぜひリシアが浮く悩みから解放され、あなたの水槽をさらに美しいものにしてください。諦めずに、理想のアクアリウム作りを楽しみましょう。



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