
「あれ、うちのベタ、なんだか元気がないな…」
「鱗が少し逆立っている気がする…」
愛するベタの少しの変化に、胸がざわつくような不安を感じていませんか?その症状、もしかしたら「松かさ病」かもしれません。
松かさ病は、ベタをはじめとする観賞魚にとって非常に恐ろしい病気の一つで、残念ながら致死率も高いことで知られています。しかし、早期に発見し、適切な治療を施せば、決して助からない病気ではありません。
この記事では、ベタの松かさ病について、以下の点を徹底的に解説します。
- 松かさ病の具体的な症状(初期~末期)
- 原因となる「エロモナス菌」とは?
- 薬浴や塩水浴などの詳しい治療法
- 他の魚にうつるのか?という疑問
- 二度と繰り返さないための予防策
この記事を最後まで読めば、松かさ病への正しい知識と具体的な対処法が身につき、大切なベタを救うための第一歩を踏み出せるはずです。どうか諦めずに、一緒に向き合っていきましょう。
松かさ病とは?
まずは、松かさ病がどのような病気なのか、基本的な知識から確認していきましょう。
松ぼっくりのように鱗が逆立つ致死率の高い病気
松かさ病は、その名の通り、全身の鱗が松ぼっくりのように逆立ち、体が膨れて見えるのが最大の特徴です。これは、体内にたまった水分(腹水)によって体が膨張し、それに押し上げられる形で鱗が逆立ってしまうために起こります。
進行が早く、治療が遅れると命を落とす可能性が非常に高い、深刻な病気です。
なぜ松かさ病になるの?主な原因は「エロモナス菌」
松かさ病の直接的な原因は、「エロモナス・ハイドロフィラ」という細菌の感染です。
しかし、このエロモナス菌は、実は水槽の中に常に存在している「常在菌」の一種。普段はベタに悪影響を及ぼすことはありません。
では、なぜ発症してしまうのでしょうか? それは、水質の悪化や急な水温変化、ストレスなどによってベタの免疫力が低下したときです。弱ったベタの体にエロモナス菌が侵入し、内臓機能に異常をきたすことで発症に至ります。
つまり、松かさ病は「エロモナス菌がいるから」発症するのではなく、「ベタが弱っているから」発症する病気なのです。
ベタの松かさ病チェックリスト

松かさ病は、何よりも早期発見が重要です。日々の観察で、以下のようなサインがないか確認してみてください。
初期症状:見逃さないで!
初期段階では、まだ見た目の変化はわずかです。しかし、行動にサインが現れることがあります。
- 食欲が落ちる、餌を食べなくなる
- 水槽の底でじっとしていることが増える
- ヒレをたたんで元気がなさそうに見える
- 体の一部(お腹周りなど)が少し膨らんでいるように見える
- 鱗が数枚、少しだけ浮き上がっているように見える
この段階で気づくことができれば、回復の可能性はぐっと高まります。
中期症状:鱗の逆立ちが顕著に
病気が進行すると、誰が見ても明らかな症状が現れます。
- 全身の鱗が逆立ち、明らかに松ぼっくりのように見える
- お腹がパンパンに膨れ上がる
- 目が飛び出して見える「ポップアイ」を併発することがある
- フンが白く長い、またはフンをしなくなる
この段階になると、ベタはかなり苦しい状態です。一刻も早い治療開始が必要です。
末期症状:非常に危険な状態
末期症状になると、治療は極めて困難になります。
- 泳ぐ力を失い、横たわったり逆さまになったりする
- 鱗が剥がれ落ち、皮膚が赤く見える
- 体表から出血が見られる(赤斑病の併発)
ここまで進行すると、残念ながら助けることは非常に難しいと言わざるを得ません。そうなる前に、初期・中期の段階で手を打つことが何よりも大切です。
ベタの松かさ病の治療法

松かさ病の疑いがある場合は、すぐに治療を開始しましょう。基本的な治療は「隔離」と「薬浴」です。
まずは隔離!治療専用水槽(薬浴水槽)の準備
病気のベタは、元の水槽から別の容器に移して治療します。これは、他の魚への感染を防ぐ(可能性は低いですが)目的と、正確な量の薬を投与するためです。
- 容器: 1~3リットル程度のプラケースや小型水槽でOKです。
- 水: 元の水槽の水と新しいカルキ抜きした水を半々程度で混ぜます。
- 水温: ヒーターを設置し、28℃~30℃に設定します。水温を少し高めに保つことで、ベタの免疫力や新陳代謝を高め、薬の効果を促進します。
- その他: ろ過装置は不要です。エアレーションは、水流が弱くなるように調整して設置しましょう。
基本の治療法①:薬浴
松かさ病の原因菌であるエロモナス菌に効果のある抗菌剤(魚病薬)を使います。
▼ おすすめの魚病薬
- 観パラD(またはパラザンD): エロモナス菌治療の第一選択薬として有名です。
- グリーンFゴールド顆粒: 幅広い細菌感染症に効果があります。
- エルバージュエース: 上記の薬で効果が見られない場合に使われることがあります。
これらの薬を、規定量を正確に守って薬浴水槽に投入します。薬浴期間は薬の種類にもよりますが、5~7日程度が目安です。
基本の治療法②:塩水浴
薬浴と同時に0.5%の塩水浴を行うことも効果的です。
塩水浴の目的は、殺菌ではなく「ベタの体力消耗を抑える」ことです。 魚は浸透圧調整のために常にエネルギーを使っていますが、体液の塩分濃度に近い0.5%の塩水に入れることで、その負担を軽減できます。これにより、ベタは病気と闘うことに体力を集中できるようになります。
【0.5%塩水の作り方】
水1リットルに対して、食塩を5g溶かします。(例:2リットルの水なら塩10g)
治療中の注意点
- 餌やり: 治療中は内臓に負担をかけないため、基本的には絶食させます。ベタは数日間餌を食べなくても問題ありません。
- 水換え: 薬の効果を維持し、水質悪化を防ぐため、2日に1回程度、半分~1/3の水を交換します。その際、交換する水量に合わせて薬と塩を追加してください。
- 観察: 毎日ベタの様子をよく観察し、症状の変化(鱗の逆立ちが収まってきたか、元気が出てきたかなど)を記録しましょう。
松かさ病は他の魚にうつる?
「他の魚がいる水槽で松かさ病が発生した場合、うつるの?」と心配になる方も多いでしょう。
結論から言うと、健康な魚にうつる可能性は極めて低いです。 前述の通り、原因となるエロモナス菌は常在菌であり、体力や免疫力が正常な魚には感染しません。
ただし、1匹が発症したということは、その水槽の環境が悪化しているという危険なサインです。病気のベタを隔離治療すると同時に、元の水槽の水質を見直し、底砂の掃除や水換えを徹底することをおすすめします。
今日からできる松かさ病の予防策

治療が無事に成功しても、飼育環境が改善されなければ再発のリスクは残ります。大切なベタを病気から守るために、以下の予防策を徹底しましょう。
定期的な水換えを徹底する
最も重要なのが水質管理です。ベタは小さな容器でも飼育できますが、その分水は汚れやすくなります。少なくとも3日に1回、できれば毎日、1/3程度の水換えを心がけましょう。
餌の与えすぎに注意する
餌の与えすぎは、水を汚すだけでなく、ベタの内臓にも負担をかけます。1日に1回、数分で食べきれる量を与え、食べ残しは必ず取り除きましょう。
水温を安定させる
水温の急激な変化は、ベタにとって大きなストレスです。特に冬場はオートヒーターを使用し、年間を通して水温を25℃~28℃に保つようにしてください。
ストレスを与えない環境作り
頻繁にレイアウトを変えたり、水槽を叩いたりといった行動は避けましょう。ベタが落ち着ける隠れ家(水草やシェルター)を用意してあげるのも効果的です。
まとめ
今回は、ベタの松かさ病について、症状から治療法、予防策まで詳しく解説しました。
- 松かさ病は、水質悪化などによる免疫力低下が引き金となる細菌感染症
- 初期症状は食欲不振や元気のなさ。鱗の逆立ちは中期以降のサイン
- 治療の基本は「隔離」「薬浴(観パラDなど)」「0.5%塩水浴」
- 一番の薬は、病気にさせないための「予防(水質・水温管理)」
松かさ病は確かに恐ろしい病気ですが、飼い主であるあなたがいち早く気づき、行動することで救える命です。この記事が、あなたの愛するベタの助けになることを心から願っています。どうか諦めずに、最善を尽くしてあげてください。



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